僕が自分の頭髪に違和感を覚えたのは、仕事のプロジェクトが佳境に入り、睡眠不足とプレッシャーが続いていたある日の朝、シャワーを浴びている時に手に絡みつく異様な量の抜け毛を見た時でした。最初は「ついに自分もAGAになったのか」と思い、父や祖父の頭を思い浮かべて遺伝の宿命を呪いましたが、鏡でじっくり確認すると、全体的な薄毛ではなく、後頭部に五円玉ほどのツルツルとした境界のくっきりした脱毛部分があることに気づき、そのあまりの滑らかさに言葉を失いました。AGAであれば生え際から徐々に薄くなるはずなのに、なぜこんな場所が突然抜けるのかという恐怖に駆られ、インターネットで検索を繰り返す中で「円形脱毛症」という言葉に辿り着き、そこから僕の治療の旅が始まりました。近所の皮膚科を受診すると、医師はマイクロスコープで僕の脱毛部分を丁寧に観察し、周囲の髪が「感嘆符毛」と呼ばれる特有の形になっていることを指摘して、AGAではなく円形脱毛症であるとの確実な診断を下してくれました。医師の説明によれば、僕の体の中でTリンパ球という免疫細胞が自分の毛根を敵と見なして攻撃してしまっており、それがこの突然の脱毛を招いたとのことでした。治療として処方されたのはステロイドの外用薬と、血行を促進する成分、そして何より「ストレスを溜め込まず、しっかり栄養を摂って休むこと」という生活改善の指導でした。治療を開始してからの数ヶ月は、脱毛斑が少し広がったように感じて絶望しそうになる夜もありましたが、医師が「今は毛根が休んでいるだけで、死滅したわけではないから大丈夫」と励まし続けてくれたことが大きな支えになりました。三ヶ月が過ぎる頃、あんなに滑らかだった皮膚にうっすらと産毛のような感触が戻ってきた時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。一方で、僕は以前から気になっていた額の生え際の後退についても相談し、円形脱毛症の治療と並行して、AGAの進行を抑えるフィナステリドの服用も慎重に開始することにしました。この併用療法によって、突然の円形脱毛への対処と、将来的な薄毛予防の両面から自分の髪に向き合うことができ、結果として以前よりも自分の体調管理に敏感になり、健康的な生活を手に入れることができました。一年が経過した今、後頭部の円形脱毛はすっかり塞がり、周囲からも髪のツヤが良くなったと言われるようになりましたが、あの時のショックと向き合い、正しく何科を受診すべきか判断できたことが、僕の人生において大きな転換点になったと確信しています。