私は長年、大学病院の皮膚科医として勤務した後、現在はAGA専門クリニックで多くの患者様を診察していますが、一般の皮膚科診療と専門的なAGA外来の間には、診断の深さと患者様への向き合い方において決定的な違いがあると感じています。一般皮膚科を訪れる患者様の多くは、湿疹や蕁麻疹、水虫といった「今すぐ治したい苦痛」を抱えており、医師もそれらを短期間で解消することに注力します。そのため、AGAの相談を受けたとしても、視診だけで「男性型脱毛症ですね」と診断し、基本的な薬を処方して終わるという流れが一般的です。もちろん、これ自体が間違っているわけではありませんが、AGAは患者様にとって「人生の質」や「自己肯定感」に直結する非常にデリケートな問題であり、単に薬を出すだけの治療では不十分な場合が多いのです。専門の外来では、まず初診時に三十分から一時間という長い時間をかけて、生活習慣や家族歴、これまでの髪の変化を詳細にヒアリングします。その上で、高倍率のマイクロスコープを使用し、毛髪の太さの不均一性や毛穴あたりの本数、頭皮の血流状態などを数値化して記録します。これにより、半年後の治療効果を「なんとなく増えた気がする」という主観ではなく、データに基づいた客観的な事実として提示できるのが、専門的な診療科の強みです。また、処方薬に関しても、フィナステリドやデュタステリドといった阻害薬だけでなく、血管拡張剤であるミノキシジルの内服の適否を循環器系の負担を考慮しながら慎重に判断したり、亜鉛やビタミンといったサプリメントとの飲み合わせを考慮したりと、非常に緻密な計算の上でプランを作成します。患者様の中には「内科で薬だけ貰えば安上がりだ」と考える方もいらっしゃいますが、血液検査による副作用のモニタリングを行わずに強い薬を飲み続けることのリスクを忘れてはいけません。私たちは、単に髪を増やすことだけを目的としているのではなく、医学的見地から患者様の全身の健康を守りながら、安全に理想の姿へと導くことを使命としています。何科に行くべきかという選択は、あなたが自分の体と髪に対してどれだけの安全と確実性を求めているかという問いそのものなのです。
現場の医師が語るAGA外来と一般皮膚科の診断における違い